ナポレオンが世界一美しい広場だと絶賛したヴェネツィアのサンマルコ広場。当然ながら、世界をくまなく見た上での評ではない。著名人にはそれぞれの世界一の広場があり、ヴィクトル・ユゴーなどはブリュッセルのグラン・プラス広場が世界一だと断言している。好みで言えば、ぼくはユゴーに同意する。
世界一美しいでもいいし、単に美しいでもいいが、ほめそやす対象の中に佇むよりも、ちょっと距離を置くほうがのぼせ上らずに「美」を照見できるような気がする。サンマルコ広場は運河から眺めるのがいい。運河から眺めるにはヴァポレットという水上バスに乗る。前方の甲板に陣取って波をくぐりながらアプローチしていくと、広場が歴史を漂わせてくるから不思議である。
このサンマルコ広場から水辺に出ると、サルーテ聖堂が見える。夕暮れ時には大勢の人たちが集まって聖堂の方向を眺める絶景スポットだ。有名画家による絵画作品も多い。鉛筆でスケッチしたまま放置していたものが出てきた。八年ぶりのご対面である。そのスケッチと写真アルバムの一枚を参照しながら速描してみた。スケッチは夕景時のものだったが、夕景前のまだ明るさが残っている雰囲気にアレンジ。パステルを水を含ませた筆で溶かして使った。そのパステル、百円ショップで買った18本セット。
Katsushi Okano
Basilica di Santa Maria della Salute, Venezia
2014
Pastel, ink (lapis lazuli)