月末間近になって今月を振り返ろうとノートを繰ったら、長文がほとんどない。読み返して記憶を辿るには長文が適している。短文には文脈がなく、行間と言うほどの行数がない。ハイコンテクストな点メモをいくつか並べて一ヵ月を振り返ってみる。
✒ 東洋陶磁美術館で『文房四宝』を鑑賞してきた。筆、硯、墨、紙。これらの凝りように比べたら、PCやスマホはつまらない。
✒ やむをえず、チェーン店のカフェに入った。つまり、巨大な飲料自販装置の一つの部品になった。
✒ 本と新聞を読む。下手くそなりに社会情勢や天気を読む。ほとんど当たらないが、他人の心理や手の内を読む。サバを読む連中もいるが、ぼくは酢で〆る。
✒ 雨の日の会合。「やっぱり雨。わたし、雨女」と誰かが言う。うぬぼれてはいけない。雨の日は、みんな雨男、雨女。
✒ わが街のウォーターフロントに垢抜けた店がずいぶん増えてきた。しかし、ドアや窓越しに受ける印象は手招きに到らない。垢抜けて逆に魅力は遠ざかる。
✒ グーテンベルグまで遡ることはない。活版印刷ということばと仕事の、なんとノスタルジックで重厚で生命力豊かなことか。
✒ 「三日月」を「三ヵ月」と書き間違えても、ワードは決して校正してくれない。