ナヴォナ広場のランチ

フィレンツェで肉やハム、ナポリでピザ、ボローニャでボロネーゼのパスタに味をしめてしまうと、ローマでの食事は見劣りする。ローマには延べ十数日滞在してあちこちの食事処にも足を運んでいるが、記憶に残るのは一品か二品。「これ!」というのがない。

ローマを最後に訪れてから6年と少し経った。トレビの泉にコインを投げ入れなかったので、再訪の機会はないかもしれない。帰国してから「カーチョ・エ・ペペ」を知った。イタリア各地にある料理だが、本家はローマ。ペコリーノ・ロマーノというローマ特産の高級チーズと黒胡椒だけを使ったパスタである。知ってほどなく、いいペコリーノが手に入ったので自分で作ってみた。なかなかの味である。自作でこれなら、本場ではさぞかしうまいに違いない。この料理を売りにする、観光客で賑わう店もあると聞く。

観光客で賑わう店を敬遠してきた。入りにくさはあるものの、地元の人たちがこよなく愛する店を探したり人づてに聞いたりして食べ歩きするほうがいい。安いハウスワインを注文して、メニューを見て悩むのも楽しみの一つである。


とは言うものの、観光メッカの地で食事しないで帰ってくると、旅行してきた気分にならない。だから、数日間の滞在中に、値段が少々張るのを知りながら、敢えて一度はおのぼりさんになってみるのである。ローマではおのぼりさんを演じる場にナヴォナ広場を指名した。ここには、有名な噴水彫刻がある。四大河の噴水、ムーア人の噴水、ネプチューンの噴水の三つがそれ。昼間からワインを飲み、だらだらと長い時間をかけて食事をする。給仕を担当する男性とも会話を交わす。その日はちょっとした市が立っていたので、スケッチしてみた。帰国後に色を付けたのがこの一枚。

IMG_5765Katsushi Okano
Trattoria alla Piazza Navona
2004
Pigment liner, felt pen

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岡野勝志(おかのかつし) 企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長 企画アイディエーター/岡野塾主宰 ヒューマンスキルとコミュニケーションをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。

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