静かなGWの二字熟語遊び

7年半前に最初の『二字熟語で遊ぶ』で二字熟語の例文と説明文を書いてから、今日で66セット取り上げたことになる。□○と○□で1セットなので、熟語の数は倍数の132。ノートにはまだ88セットのリストがある。リストと言っても熟語の見出しだけで、例文と註釈は書いていない。これからも少しずつ続けていくつもり。

【子女と女子】
(例)「転校生のオカノ君です。オカノ君はお父さんの仕事の関係で5歳から15歳までアメリカで過ごした帰国『子女』です」と先生が紹介した時、少なからぬ同級生がぼくを「女子」だと思ったそうである。

子女は息子と娘の両方を指すが、「良家の子女との縁談」などと聞くと娘を感じてしまう人が多いそうだ。しかし、帰国子女と言う時は男女を区別していない。他方、女子は文字通り女の子である。最近、「おばあちゃんなのに女子会とは厚かましい」と文句をつける人がいるが、女子という語は本来長幼を問うものではない。なので、おばさんやおばあちゃんの女子会は正しい用例なのである。

【前門と門前】
(例)メールには「午前10時に○○寺の『門前』で集合」とだけあって、その門が「前門」か裏門かは書いていなかった。てっきり駅に近い裏門だと思っていたら「正門です」というメールがきた。

神社仏閣には前門があればたいてい後門もある。一般的には前門が正門または表門、後門が裏門である。有名なのが「前門の虎、後門の狼」。門前にも「門前の小僧」「門前払い」などの慣用句があるが、元は単に「門の前」の意だった。前門は表門だが、門前の門はどの門かを特定しない。門前町の門は具体的な門ではなく、やや概念的な門である。すなわち、寺や神社の周辺に広がる町をそう呼んだのである。

【保留と留保】
(例)「保留」と書けばよかったのに、恰好をつけたつもりで「留保」を使ったら、「留保にした理由は何かね?」と聞かれて困った。当時はまだニュアンスの違いを知らなかった。

保留と留保のニュアンスがよくわからないので、英語でチェックした人がいた。どちらも“reservation”が出てきて困惑したらしい。決めたいのは山々だが、その場ではすぐに結論が出せない・・・・ので、しかたなくするのが「保留」。一時的に結論を見送るという点では「留保」も同じだが、留保には「結論を出さない・・・・」という趣がある。つまり、敢えて決めない理由が意図がありそうだ。相手が強く意識されるのが留保の特徴かもしれない。


シリーズ〈二字熟語遊び〉は二字の漢字「〇△」を「△〇」としても別の漢字が成立する熟語遊び。大きく意味が変わらない場合もあれば、まったく異なった意味になる場合がある。その類似と差異を例文によってあぶり出して寸評しようという試み。なお、熟語なので固有名詞は除外。

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岡野勝志(おかのかつし) 企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長 企画アイディエーター/岡野塾主宰 ヒューマンスキルとコミュニケーションをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。

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