数字を含む二字熟語の数は限られているが、あることはある。あることはあるが、字順逆転すると意味不明になるものが多い。数少ない例から3つ選択。
【五七 と 七五】
(例)五七の五文字と七文字を並べ替えて七五にしても意味が変わらないという人がいるが、ニュアンスと調子は見事に変わる。
俳句は五七五、短歌は五七五七七。たとえば、「春過ぎて夏来たるらし白妙の衣ほしたり天の香具山」という和歌は、五七を二度繰り返して七で終わる。
「恋に焦がれて鳴く蝉よりも鳴かぬ蛍が身を焦がす」は都々逸で、七七七五。下線部の〆は七五調だ。
七五調は浄瑠璃の特徴。近松門左衛門の『曾根崎心中』の名調子が有名。
あれ数ふれば暁の
七つの時が六つ鳴りて
残る五つが今生の
鐘の響きの聞きをさめ
寂滅為楽と響くなり
五音と七音の韻律は日本人に快く響く。五七調は荘重で、七五調は軽やかな調子と言われる。声に出してみてこその韻律である。
【十二 と 二十】
(例)ちょうど感をあまり覚えない十二なのに時間やカレンダーには不可欠。他方、ちょうど感があるのに二十という数字はわが国では二十歳の他に出番が少ない。
十進法に比べて十二進法は使いにくそうに見えるが、時計盤の文字、1ダース、年十二ヵ月、十二支、星座で身近にお世話になっている。二十という数字は、20ドル紙幣や20ユーロ紙幣など、世界では貨幣の単位としてスタンダードである。
【万一 と 一万】
以前取り上げたが、例文を新たにして書いてみた。
(例)「万一そんな事態になったら……」とは通常ありえないこと――めったにないこと――を仮定している。他方、一万は昨今さほど珍しいものではなくなった。
千を10倍、百を100倍、十を1,000倍にするとそれぞれ一万になる。一万の大きさを説明するのにこれ以上詳しい方法は見当たらない。こんなに大きな数字なのに、一万円という文字は見た目が軽い。祝儀袋に「壱萬圓」と画数の多い漢字を使うのは貫禄を示すためである。
〈二字熟語遊び〉は、漢字「AB」を「BA」と字順逆転しても意味のある別の熟語ができる熟語遊び。例文によって二つの熟語の類似と差異を炙り出して寸評しようという試み。大きく意味が変わらない場合もあれば、まったく異なった意味になることもある。熟語なので固有名詞は除外する。
