年がら年中、毎日が記念日

一ヵ月溜め込んだ新聞。もちろん目ぼしい記事には目を通しているのだが、そっくり捨てる前にもう一度ざっと見る。切り抜きにして残しておく場合もある。切り抜くに値する記事かどうかの基準は「おもしろい」と「誰かに教えてあげたい」と「ばからしい、または呆れる」。

今週金曜日は大阪での私塾の日。1010日である。1010日は何の日? 「体育の日」だった、何年か前までは。もちろん、その日が1964年の東京オリンピックの開会式の日であることは知っている。今では体育の日はハッピーマンデーとなり、10月の第二月曜日になった。

ある新聞記事に、その1010日は「転倒予防の日」と制定され、『日本記念日協会』に正式に登録されたと書いてあった。10月を”テン”と英語読みし10日を”トウ”と日本語読みする。併せ技にて”テントウ”で一本! ちょっとずっこけてこっちが転倒しそうになった。「予防」というニュアンスがどこにも見当たらないので、1010日だけだと「転倒の日」になりはしないのか。


それにしても『日本記念日協会』とはすごいではないか。NPOや任意団体がどんどん増えてますますニッチなテーマに入っていく。ぼくも18年ほど前に「関西ディベート交流協会」という任意団体を創始したが、ニッチであった。ニッチの上に、「日本」と欲張らずに「関西」と控えめにしたから超ニッチな存在と言える。

その『日本記念日協会』の1010日を検索してみて、もう一度驚いた。「転倒予防の日」のほかに13もの記念日が登録されているのだ。貯金箱の日、お好み焼の日、トマトの日、和太鼓の日、空を見る日、充実野菜の日、パソコン資格の日、トレーナーの日、銭湯の日……等々。

貯金箱にはコイン投入口がある。それがに見え、0がコインに見えるから1010日。感心するか苦笑いするか、ちょっと迷ってしまう。

お好み焼を仕掛けたのはオタフクソース。「ジュージュー」というシズルの音がそのまま1010日。これはわかりやすいが、「焼肉の日」でも「ステーキの日」でもいいわけだ。

トマトは微妙な語呂合わせ。「1010」で「トマト」と読む(10の間に「と」で、「10間と=トマト」という意図か)。

和太鼓は、「1010」で「ドンドン」と読むらしいが、何のこっちゃ!? という感じ。「~と読む語呂合わせ」と解説されているのだが、「~と読め!」と命じられているみたいだ。語呂が合っていると言うよりも、語呂がこじつけられると思うのだが……。

1010日午前1010分に日本じゅうで空を見上げて美しさを語り合いましょう」とは「空を見る日」の動機。10は英語で「テン」で、「天」に通じるとのこと。私塾の講義は午前10時スタートなので、残念ながら空を見上げることはできない。

次いで伊藤園が仕掛けた「充実野菜の日」は、調べる前からおおよその見当がついた。これは、実りの秋の10月にやってくる10日を「ジュウジツ」と読ませる。

パソコンは0の二進法を使うから1010日は「パソコン資格の日」。ならば1011日でも1110日でも10日でもいいことになる。好意的に考えれば、0がそれぞれ二つずつというのがこだわりなのだろう。

トレーナーの「ト」が10で、トレーナーの英語であるスウェットの「ト」が10。だから1010日は「トレーナーの日」なんて、この記念日はちいと苦しくないか!? 

これに比べれば、1010を「セントウ」と読ませる語呂合わせは悪くはない。旧体育の日に汗をかいて、それを銭湯で流すのだから辻褄も合っている。


もちろん1010日だけではなく、365日がこんなふうに複数のなんとか記念日で彩られている。少し茶化してしまったのは反省するが、こうした記念日を小馬鹿にしているのではない。語呂合わせでもダジャレでもいいし、実際の意味ある記念でもいいから、暇な折りにファミリー独自の記念日を365日分作ってみてはどうだろう――と提言する次第だ。ご覧の通り、「何でもあり」だから気楽にできること間違いなし。

ちなみに、本日108日は「入れ歯感謝デー」ほか5つの記念日が登録されている。108は「百八」だから、ぼくは「煩悩の日」と名づけることにする。

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proconcept

岡野勝志(おかのかつし) 企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長 企画アイディエーター/岡野塾主宰 ヒューマンスキルとコミュニケーションをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。

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