語句の断章(51)「けれん」

若い頃、初見の「外連」が読めなかった。ソ連の別名に見えた。調べて、これがあの「けれん」だと知る。外連は借字しゃくじなので読めなくてもしかたがないが、そもそも意味がわかっていなかった。

浪花節や義太夫由来としてある辞書が多いが、最初に調べた本では俗受けをねらう歌舞伎の演技というふうに書かれていた。先日Googleで検索していたら、たまたま英語版のWikipediaに導かれた。

Keren are stagecraft tricks used in Japanese kabuki theater, making use of trapdoors, revolving stages,  and other equipment.

「けれんは日本の歌舞伎で使う舞台の仕掛けで、落とし戸や回り舞台などの装置や道具のこと」と書いてある。日本人が日本人向けに説明するよりもわかりやすい。大向こうを唸らせる、派手なトリックや奇抜な演技もけれん。鳥類では孔雀がけれん使いの筆頭だろう。

けれんは舞台の受けねらいから離れて一般化し、今では転じて「はったり」や「ごまかし」の意味で使われることが多い。「けれん」だけをポツンと使うことはあまりなく、ふつうは「けれんみ」か「けれんみがない」が一般的な用法だ。

打ち消しの語感のせいか、「けれんみがない」と評されると、あまり褒められた気分にならない。しかし、「あなたの話し方や書かれる文章はけれんみがない」は正しい用法の一例。こう言われたら、褒められているのである。

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岡野勝志(おかのかつし) 企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長 企画アイディエーター/岡野塾主宰 ヒューマンスキルとコミュニケーションをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。

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