お勘定は別々

レストランに行ったら長蛇の列ができていたとしよう。並ぶのが嫌なら立ち去ればいい。義務などない。と言うわけで、別の店を覗いてみた。空席があり、すんなりと入れた。食事しているうちにやがて客が増えてきた。食事を終えてレジを見ると、そこに長蛇の列。この列に並ばずに店を出るわけにはいかない。並ぶのをパスして立ち去れば食い逃げである。

お勘定別々の団体がレジ前で並ぶ場面に時々出くわす。レジ担当者の要領が悪いと列がさばけずに渋滞する。団体の中の一人が「お勘定は別々だけど、わたしがみんなの分をまとめて払っておく。精算は後で」と仕切ってくれたら、レジ前で苛立つこともないのに、と思う。

「店を出てから精算なんて現実的ではない」と反論を食らう。「第一、お釣りに困るし……」とも言われる。お釣りに困るなら適当に小銭に両替してもらっておけばいい。レジ担当にしても、一枚の勘定書きを見ながら「Aランチの方、972円です……Bランチの方は1,180円です……」などと数人相手にやるよりは、一人から全額まとめて受け取った上で、千円札何枚分かを各種硬貨に両替してあげるほうが楽であり仕事も早いはずである。

別勘定する女性たち

出張先のディナータイム。女性78人がイタリア料理の店で「別勘定」をしてもらっている。すでにぼくは食事を終えていたが、ひっきりなしにグループが勘定を済ませるのを、テーブルについたまま所在なく待っていた。こういう時は席を立って集団の後ろにつかないようにしている。しかし、そうできるのはレジが見える場所だからで、そうでなければ勘定書きを手にして席を立つことになる。

後ろに待つ人が一人客だと気づき、「お先にどうぞ」と集団の誰かが気配りしてくれることはめったにない。あるいは、「レジ待ちのお客さんが多いから、ここはまとめて出しておくね」と誰かが言い出すこともほとんどありえない。ランチタイムに比べてディナータイムはさらに時間がかかる。コース料理ならいいが、アラカルトに加えて、やれコーヒー、やれデザートという具合だから、レジ係は電卓を持ち出して個別計算することになる。

仮に別勘定にしても、フランスやイタリアのレストランでは他の客の迷惑にはならない。まず、テーブルごとにホールスタッフが決まっていて、案内、注文、飲食のサービス、勘定までを一人でこなす。そして、ほとんど例外なく、テーブルについたまま勘定ができるのである。つまり、客がテーブルを離れてレジに向かうということがないのだ。その担当者は当たり前のように三つ、四つのテーブルを担当しているが、通りがかった時に「お勘定」と一声かけておけばいい。スタッフが勘定書きを持ってくるまでは座ったままでいられる。こういう仕組みは日本では高級料理店に限られるが、どこの店でも採用すればいいのである。客を待たせないというメリットに加えて、責任感あるプロのスタッフへの信頼性が高まり、店の評判にもつながる。

投稿者:

アバター画像

proconcept

岡野勝志(おかのかつし) 企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長 企画アイディエーター/岡野塾主宰 ヒューマンスキルとコミュニケーションをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です