ボローニャⅡ
「やみくもに走り抜いて成長や発展へと向かわなくても、再生や改造を通じて街は豊かに安定できるはず」――これが、ボローニャ方式が挑んだ命題であり、世界の先進都市に一つの理想モデルを示すことになった。職人企業連合をはじめとする、書き尽くせない創意工夫が結実している。
ポルティコのある景観だけでも生活の快適性につながっているのは間違いない。だが、特筆すべきは、市民が利用できる文化芸術関連の公共施設だ。人口40万人の街とは思えぬほどの圧倒的な質と数を誇る。美術館・博物館37、映画館50、劇場41、図書館73という数字だけを見ても、わが国の人口百万都市でさえボローニャの足元にまったく及ばない。
日本全国でさまざまなテーマを掲げて話をしている。行政を対象にした政策形成やまちづくりの研修機会も増えてきた。決して事例主義者ではないのだが、指導するにあたっては、街づくりについてそれなりの勉強もし知識も更新する。ただ、ここ十年ほど注目を浴びてきた「創造都市」、とりわけ”クリエーティブ”という用語の、度を過ぎた一人歩きが気になっている。何でもかんでもクリエーティブという集団シュプレヒコールは、創意工夫からもっとも縁遠いものではないか。名立たる世界の都市が道を誤り軌道修正に悶々としているのに対して、ボローニャは本来あるべき街づくりに目覚め、常軌を逸しないように努めている――このことが創造的なのだと考える。
わずか4日間滞在しただけの一観光客だが、生意気を言わせてもらうならば、「歩きやすい街は生活しやすい街」というのは真理だ。ボローニャは歩きやすい。入り組んでいても迷わない。ネットゥーノ広場前のネプチューンの噴水からマッジョーレ通りを東へほんの300メートル行くと、二本の斜塔が立つポルタ・ラヴェニャーナ広場に達する。この通りがゴシック建築といい風情といい、歴史を漂わせる。宿泊したホテルが斜塔の裏手だったこともあり、行ったり来たりのそぞろ歩きを何度も繰り返した。