自分自身が中心となって立ち上げた最初の勉強会は〝Plan+Net”(プランネット)という、ワークショップ形式のレクチャラーズ・プログラムだった。スタートしたのは1988年で、約5年続いた。
当時と現在の時代テーマというか、関心事の相違をチェックするのに興味深い点があるので、順不同で列挙してみた。もちろんそのすべてのレクチャーをぼくが担当したのではない。ぼくが主宰したものには◎をつけておく。
人間細胞論 本当の自分と偽りの自分 僕の美術教師時代 賢い税金の話 速読のポイント 世相批評座談会 裁判のABC ◎たとえれば楽し 女性能力開発法 ストラテジスト 生命と科学に感動 教育マーケティング ◎ゲームのルール学 商業空間新情報 おでんパーティー ビートルズの社会学 ◎英会話独習の秘術 バリ島の音楽論 家族関係の活性化 リカちゃん大研究 キリストと釈迦について考える 少女マンガ論 モータースポーツ文化論 フランスのロック・ポップス お米が育つ過程 美しくボディビル 百人一首の魅力 ◎異端と正統の境界 流れを読む占星術 自己実現を設計する ◎絵本の世界への誘い ◎ディベートで知的武装する 無人島サバイバル報告 ◎十人十色の発想学 ダービー馬の誕生 必殺セールス術 スポーツに日米の違いを見た 意外に簡単、「個人輸入」 寺と町の栄枯盛衰 ああ、ユーゴスラビア旅情 インド、まるごと 若者心理を考える――曖昧さの研究 現代音楽史とその周辺 恐い、恐くない、成人病 1920年代の光と翳 模倣の美学 ◎大阪の下町情緒って何だろう 欧米建築レポート 人生の資金設計 ◎頭脳を爆発させる フェミニストかく語りき 時代劇教壇 カルカッタの冒険 映画は最高!
驚かないでほしい。以上がすべてではない。総開催数のわずか4分の1である。なんと週一回というハイペースで開いた勉強会だったのである。テーマのバリエーションが豊富で、おもしろい切り口・着眼も垣間見える。会員には専門家もいればアマチュアもいた。会費はコーヒーがついて1回500円。レクチャラーは全員手弁当だ。あらためて、なかなかの人材に囲まれていたという実感を強くする。
この勉強会のユニークさは、「聴く・学ぶ」もさることながら、専門・趣味・自論について小一時間薀蓄を傾けてもらうことにあった。だからこそレクチャラーズ・プログラムなのである。話の内容については質問や批評も出る。和気藹々としたムードもあったが、挑発的な一言で真剣な空気に一変する場面もあった。
話してみて初めてわかることがある。話してみてこそ己の思考が明快になることがある。レクチャラーとしての立場がもっとも大きな学びになると信じて、有志が集まってお互いに発表の機会をつくったのだ。もちろん、これだけのテーマにくらいついて傾聴するのも相当なもの。だから聞き手にはボーダレスな知への、尋常でない好奇心が不可欠だった。賛同してくれた会員も最多で100名近くなり、常時20名近くの会員が出席した。
この趣旨に近い試みは今の時代も有効だと思っている。もはや週一というエネルギーはないが、月一、二回の1時間ちょっとの勉強会なら再現できるかもしれない。
ところで、ぼく自身のテーマの本質に変遷はあっただろうか? 底辺に潜む考え方はあまり変わっていないような気がするが、「十人十色の発想学」で蒔いた種は現在も育てている。第3期を迎える私塾の大阪講座は明日開講するが、そのテーマが「発想(ひらめき)の極意」というのは決して偶然ではない。