「またご謙遜を……」

まったく個人的な感想を書く。

大上段からの物言いはなるべく避けるほうがいい。しかし、控えめにものを言われるよりはよほどましだと思っている。過剰にへりくだられると対応に困る。その「へりくだり分」を引き算しなければならないからだ。はっきり言ってもらうほうが足し算だけで済むのでありがたい。

婉曲はおしとやかである。棘がなく、穏やかである。露骨は下品だが、抑制には品がある。しかし、相手の遠回しな表現の真意を探らねばならないのは面倒この上ない。会話の核心よりも、余計なことに神経を遣わねばならない。


「私などまだまだ若輩でして……云々」と誰かが言う。若輩などとは十中八九思っていない。そのことが見え見えなのだから、へりくだり効果がない。仮に「若輩者でして」などと謙遜されても、「またご謙遜を」などと返すことはもうしないことに決めた。「そうですか」とことば通り受け止めてスルーする。真に受けられて困るなら、若輩などと言わなければいい。

場にふさわしくないのに、やみくもにへりくだられたり丁寧語を連発されたりすると集中力が途切れる。そこまで低姿勢を取られるとやりとりが不自然になる。ホンネで意味明快に喋ろうとするこちらとの波長が合わなくなる。会話がスムーズに流れなくなるのは、ほとんどの場合、バカ丁寧ゆえだ。丁寧や謙遜は万能のマナーではない。それどころか、肝心の話を空洞化させかねないのである。

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岡野勝志(おかのかつし) 企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長 企画アイディエーター/岡野塾主宰 ヒューマンスキルとコミュニケーションをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。

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