「言行一致」によく似た熟語に「知行合一」がある。これは陽明学の学説の一つで、文字通り「知識と行為が一つになること」を意味している。知ることとおこなうことを並べてみたら、頭でっかちで、おこないはたいてい劣勢だ。
言行に関しても同様で、発言と行動はめったに一致することはない。言うだけ言って行動が伴わなければ、「あなたは口ばっかり」などと皮肉られる。
かと言って、自分の発したことばと矛盾することなく、何から何までことば通りに行動しようと思えば、几帳面さで神経がまいってしまいかねない。精神衛生的には、言はいつもおこないよりも水増し気味であるのがよさそうだ。
言行一致は理想であって、なかなか実現しそうにない。それが証拠に、完璧な実践者に出合うことなどめったにないではないか。しかし、一致が容易に達成できないにせよ、真実のことばは語れるし、おこないに誠意と気持ちを込めることもできない話ではないだろう。
孔子は「言忠信にして行い篤敬」と言行一致の人情の厚さ・慎み深さという理想像を掲げた。なかなかハードルが高いが、ぼくたち凡人は焦らず慌てず一歩ずつでいいと思う。「言うは易く行なうは難し」を肝に銘じて、軽はずみな思いつきで喋るのを戒める。まずは「まことのことば」を語らせるよう舌をよくしつけねばならない。