Googleで「どちらとも言えない」を検索したら、上から4つ目に『「どちらとも言えない」と「わからない」』というのが出てきた。見覚えがある。本ブログで自分が書いた文章だ。2008年6月15日の日付。11年前のこと。
これに先立って2000年9月のノートにも「どちらとも言えない」という表題の小文を見つけていた。この2回にとどまらず、「どちらとも言えない」についてよく考察する。よく考えるのはよく耳にするからだ。実際の対話で相手が煮え切らない返事をするたびに、このフレーズを思い出す。
「どちらとも言えない」と答えるには、その前に二つの選択肢が必要だ。回答欄の一つ目に出てきてはいけない。「Q:あなたは2020東京五輪の観戦に行きたいですか?」に対して、いきなり「どちらとも言えない」とは言えないのである。
まず二つの選択肢、「行きたい(イエス)」と「行きたくない(ノー)」が示され、どちらにも該当しない場合に「どちらとも言えない」に☑が入る。では、「競技次第では行きたい」という条件付きの回答はどの欄にチェックを入れたらいいのか? 「競技次第では行きたい」は「競技次第では行きたくない」でもあるから、「どちらとも言えない」にチェックすることになる。それで本意が示せたかどうかは微妙である。
おびただしい選択肢があるにもかかわらず、わずか数種類に絞ってあらかじめ回答欄に記してあるのがアンケート。そもそも問いと答えが大雑把なのである。精度を高めたいなら、面倒でも一人一人からイエス・ノー以外の微妙な条件をヒアリングするしかない。ただ、そうしたとしても、集めた回答から意味のある結論を導くのは容易でない。回答の多寡を評価するくらいしかできない。
Q: あなたは食後にコーヒーが飲みたくなりますか?
□ 飲みたくなる
□ 飲みたくならない
□ どちらとも言えない
条件を棚上げして、問いに素直に答えればいいのである。問いの前提に「どちらかと言えば」を感知すればいい。したがって、「どちらとも言えない」という項目はいらない。そんなイエス・ノーでは答えられないというむきもある。しかし、「飲みたくなる」は「どちらかと言えば、飲みたくなる」であり、「飲みたくならない」は「どちらかと言えば、飲みたくならない」である。条件がポジティブならイエス、ネガティブならノー。こういう結論に落ち着く。
もし三つ目の「どちらとも言えない」がなければ、上記のように考えて回答すればいい。条件というケチがつくと、おおむねノーがイエスより多くなる。なぜなら、ノーというのはケチをつけるのに似ているから。ともあれ、最初から「どちらとも言えない」という選択肢が書いてあると、さほど考えずにそこにチェックが入りやすい。そして、そんな回答はいくら多く集めても何の役にも立たないのである。