どんなに評判がよくランキング上位だとしても、入ってみないことには食事処の良し悪しはわからない。今いるエリアで「カレー 近く」とスマホに入力すると数十店がリストアップされる。大阪随一のカレー激戦区だけのことはある。ともあれ、好みは人それぞれだから、この種の情報は参考程度にしかならない。
情報か行動か。自分が下す評価は行動の他にない。レストランの食後の満足度につながる要素のうち、筆頭は「味」である。他のどんな要素よりも「うまい」が決め手であり、「ふつう」や「まずい」では話にならない。
味に続く要素を順不同で考えてみる。もてなしを含めたサービス、清潔感、雰囲気、インテリア、椅子の座り心地、コスパなど、いくらでも列挙できる。しかし、料理評論家やグルメライターでもないぼくたちは「調査票」で採点するわけではない。総合評価で良し悪しを決めているのではなく、自分の関心に応じて判断しているのだ。
調査票ではおそらく項目として出てこないし、一般的にはたぶん取るに足らないことだが、ぼくにとってその店が将来ひいきになりそうな要素がある。それは、今しがた食事を終えたそのテーブルで、着席したまま会計ができることだ。「お勘定してください」に対して「(勘定書きを)お持ちします」と告げられる。テーブルサインを置いてある場合もある。
出張時や買物帰りは持ち物が多い。食後に荷物を携えてレジに行き、勘定書きを示して会計するのは煩わしい。料理のうまさが――ひいては食事の満足度が――半減することさえある。にもかかわらず、ほとんどの店では上着を抱えカートを引っ張ってレジに向かい、財布を取り出さねばならず、支払ったらすぐに店を出る。
先日の中華料理店では、ホール兼会計担当者が二人しかいなかったが、手際よくテーブルで会計をしてくれた。食事をしてお手洗いを済ませ、また席に戻ってきて会計を告げる。現金でもクレジットカードでもいい。実にスムーズかつスマートだ。支払い後にお茶の一杯も飲める。「とてもいい食事ができた」という満足感の画竜点睛を欠かずに済むのである。