「プロフェッショナルにとってもっとも重要な要素は何か?」と聞かれて、「はい、これです」と安直に即答できるはずがない。枚挙にいとまがないので、一つに絞るなどは不可能なのである。だが、もし三つまで許されるなら、「習慣形成」が確実に入ってくる。
ビジネスの場合は顧客から見て、行政の場合は市民から見て、プロフェッショナルはピンと際立って見えなければならない。もっとも、仕事に就く前から、誰もプロフェッショナルに恥じないスキルやノウハウを携えているわけではない。また、言うに及ばないが、仕事に就いた直後にいきなり身につくものでもない。
しかし、スキルやノウハウに先立って、日々習慣的に培ってきた何らかの資質が備わっている必要がある。面倒臭がらないという資質(たとえば料理のプロ)、細かな気遣いという資質(たとえば建築のプロ)、手先の器用さという資質(たとえば外科医)などである。
もちろん、個人差があるから、他の資質であってもいい。重要なのは、どんな資質であれ、覚えたり聞いたりしたものではなく、日常生活で習慣的に繰り返してきた経験に裏打ちされているという点である。ピンととんがったその資質が自分の仕事の骨格を形成しているという自覚であり自信である。
専門スキルやノウハウは、生活習慣から独立しているのではない。仕事と生活は不可分の関係にある。それゆえ、プロフェッショナルとしての能力は、生活スタイル、癖、繰り返しによって培養される。つまり、日々の習慣形成された資質が高度な専門性の基盤になるのである。習慣と能力の相関性についての教えはおびただしい。数ある名言から二つ引用しておこう。
「習慣は第二の天性なり」(古代ギリシアのことば)
「成果をあげることは一つの習慣である。習慣的な能力の集積である。習慣的な能力は修得に努めることが必要である」(ピーター・ドラッカー)
いずれも「習い性と成る」ことを教えている。身についた習慣は無意識のうちに暗黙知として身体に浸み込む。まるで生まれつきの性質のように才能になるのである。