食事の前、後、間のこと

いつ、どのタイミングで薬を飲むかに神経質な人たちがいる。ぼくはと言えば、あまり薬のご厄介にはならないが、予防的に処方してもらうことがある。処方されたのが漢方薬の場合、昼食前の服用をよく忘れる。食前に比べれば食後は飲み忘れはあまりしない。とにかく食べた後に飲めばいいのだから。食べ終えたが、その後にデザートのつもりなら、デザートの後に飲めばいい。

かかりつけ医に聞いたことがある。食後とは「食べてから230以内」のこと。「薬は正しく服用」などと言うが、「230分以内」という言い方がかなりアバウトではないか。20分と30分では10分の誤差がある。いちいち気にしたくなければ、食べ終えたらすぐに飲むのがいい。実際、食事処では薬オタクっぽい人ほど箸を置いて即服用しているようだ。

ほとんどの漢方薬は食前の服用が推奨されている。漢方薬をよく服用していた父は忘れずに飲み、几帳面に15分ほどしてから食事を始めたものだ。食後の目安を聞いたさっきの医師に食前のことも聞いたら、これまた食事の230分前という返事。食事の1時間前でもいいとのことだった。

要するに、食後とは食べてから(できれば)半時間以内、遅くとも1時間後までに服用すること、また食前とは(できれば)食べる半時間前、場合によっては1時間前までに服用することのようである(諸説あるかもしれないが、気にしていてはキリがない)。


ところで、食後とは何時間経っていても食後だから、飲み忘れたのに気づいたのが仮に2時間後でも食後には違いない。問題は、先に飲まねばならない食前服用を忘れて、食べた後に思い出した時である。これも医師に聞いたら、「1回パスするよりも、思い出した時点で飲めばいい」ということだった。思い出して1時間後に食前の薬を飲めば、食後の薬と同じことになるが、それも可なのである。

食間は「食事と食事の間」だが、朝食と昼食(または昼食と夕食)のど真ん中という意味ではない。もしど真ん中なら、午後7時の夕食と翌日午前7時の朝食のど真ん中は午前1時ということになる。目覚ましで夜中に起きて飲まねばならなくなる。正しくは、食後2時間以上経っていれば食間扱いである。

食間を「食事中」と勘違いする話はギャグだと思っていたが、実際にいるらしい。食前、食後、食間についてきちんと説明してもらっている患者がそれほどいないのかもしれない。知人は10数種類の薬を服用していたが、食前と食後と食間の薬が重なり、すでに飲んだかまだ飲んでないかわからなくなり、ついに毎日記録する破目に陥った。一日中薬を飲み続けて薬漬け状態になっていた。努力空しく、残念なことに数年前に亡くなった。

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岡野勝志(おかのかつし) 企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長 企画アイディエーター/岡野塾主宰 ヒューマンスキルとコミュニケーションをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。

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