抜き書き録〈テーマ:魚と米〉

📖 『さかな異名抄』(内田恵太郎 著)

ウナギの養殖は海から来る幼魚を池で育てるのだ。日本ウナギの産卵場所はまだ不明。日本ウナギの分布南限は台湾は海南島辺で、それ以南にはいない。

最近では産卵場所はマリアナ諸島ではないかという説もある。ところで、中国産のウナギは日本ウナギの幼魚を育てたものだと知って以来、懐にやさしい中国産を買い、専門家のレシピをあれこれと試行錯誤して調理している。これで十分なので、ここ数年、鰻は年に一度程度しか外食しない。

昨日の昼も、冷凍していたウナギの蒲焼でうな重を作った。中国産の蒲焼に少し手間をかけ、う巻きを焼いて添えれば、そこそこおいしく出来上がる。しかし、ウナギだけのポテンシャルでは不十分。ウナギにはほどよい硬さのご飯を合わせる必要がある。

📖 『魚味礼讃』(関谷文吉 著)

うな重とうな丼に硬めのご飯なら、寿司のシャリもやわらかいよりも硬めがいい。手や箸でつかんでシャリ玉が崩れたり割れたりすると台無しである。では、どんな米がいいか?

すしがうまいかまずいかという基準は、本能的にシャリの良否に結びつくようです。(……)米は当然名の通った米どころのものがよく、純白で透明な光沢があり、小粒でまるみのある乾燥のきいたもの、粒のそろった重みのあるものを選びます。しかも、シャリは新米ではなく、古米でないといけません。

「新米ではなく古米」に驚く向きもあるに違いない。シャリは硬めに炊き上げる。それを握るから、つまんで口に放り込むまではしっかりしている。しかし、噛むとシャリの粒が崩れて食感が心地よい。新米だと粘るのでネタと調和しない。古米しか手に入らないと嘆く前に、古米をすし飯にしてちらしや手巻きを食べるのはどうだろう。

📖 『魚料理のサイエンス』(成瀬宇平 著)

今日の昼は赤魚の塩焼き定食だった。米に合うかどうかと言えば、微妙。隣りの客が注文したのは鯖の味噌煮定食。身をほぐしてご飯をかき込んでいた。鯖は米と相性がいい。

鯖の棒ずしやバッテラは若狭湾やその近海で獲れた鯖を原料としたのが最初である。(……)棒ずしは塩鯖を塩抜きしてから酢じめする。バッテラは生の鯖を酢じめする。両方に共通しているのは、しめ鯖の上に白板昆布をのせることだ。昆布をのせることにより、昆布の旨味のグルタミン酸がしめ鯖のほうに移行する。

グルタミン酸の旨味を含んだ鯖が酢めしとよく合う。臭みもあり鮮度維持が難しい鯖が昆布と酢と一体となって絶品に変化する。棒ずしとバッテラの話には化学成分の名がいろいろ出てくる。魚料理はサイエンスだと納得する。

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岡野勝志(おかのかつし) 企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長 企画アイディエーター/岡野塾主宰 ヒューマンスキルとコミュニケーションをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。

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