オムニバスな休日

携帯ショップで様々な手続きを終えた。終えたのは手続きだけで、スマートフォンとタブレットの新機種を別々の日に受け取らねばならず、また、光回線の工事の日も自宅でスタンバイしなければならない。IT時代は楽ではない。便利のために手間暇がかかる。手間暇以上にお金がかかる。ショップで説明を受けること、約二時間。胃痛をともなう空腹感に襲われ、さあランチにするか、それとも控えるかと思案した挙句、食欲に負け天丼で腹ごしらえした。

フランドル
フランドル2

近くに喫茶店があったのを思い出す。本町通りに面したビルの通路の突き当たり。何ヵ月か前に通りがかって入店しようとしたら、ちょうど店じまいの準備中だった。と言うわけで、今日が初めて。てっきり「仏蘭西フランス」だと思っていたが、よく見たら「仏蘭」。ドル記号はぼくのPCでは表示できない「Sに二本線」。一瞬、漢字の「弗」かと思った。これで「フランドル」と読ませる。フランスではなく、オランダやベルギーのイメージだ。コーヒーの強い苦味と店の雰囲気に昭和の名残りをとどめている。

綿業会館

綿業会館の前に出た。このあたりはよく歩いている。近くに顧問税理士のオフィスがあった。十数年前に会館1階のレストランでご馳走してもらったことがある。古いビルに入っている老舗レストランでの食事は、ぼくらの世代には贅沢このうえない。大阪ガスビルの食堂での昼餐も印象に残っている。味の印象ではない。ぼくのサラリーマン最後となった会社の幹部に離職を慰留されたのがそこだったから。三十年前のことだ。その一か月後退職して起業した。

花屋

備後町から瓦町へ。色合いと装いがパリで見掛けそうな花屋。このあたりを行き過ぎる時はたいていその先に目的がある。だから、さほど印象に残らない。今日は休日、目当てはない。携帯ショップで疲れ、その流れで惰性で北へ東へと歩いたにすぎない。本町、淀屋橋、堺筋本町、北浜あたりにはレトロな建物が点々と残っている。もちろんリフォームされたものばかりだが、新築のビル群にあって束の間の落ち着きを与えてくれる。

大川大川2

数キロメートル歩いて、最後にいつもの天神橋、大川にやって来た。まばらに人がいて、新緑の春の休日を絵にしたようである。動きも音も何もかもが実にのんびりしていて、風景に吸収されている。東へ向かう船もまったく急いでいない。河岸の小径を歩くぼくが容易に追い越せたくらいである。明日は予定がない。予定のない明日に何となくわくわくする今夜は幸せである。

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proconcept

岡野勝志(おかのかつし) 企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長 企画アイディエーター/岡野塾主宰 ヒューマンスキルとコミュニケーションをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。

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