ことばの冒険、ことばによる冒険

企画の指導をしている経験から、企画力が二つの重要な要素を基礎にしていることを疑わない。一つは着想であり、もう一つは言語である。いずれも欠くことができない。企画の手法や構成にはある種の「型」が存在する。わざわざ編み出さなくても、いくつかの型を習得して組み合わせてみれば体裁は整う。しかし、アイデアは変幻自在、アイデアを生み出す習慣を身に付けるには何度も試行錯誤の場数を踏むしかない。アイデアを得ても、次にことばをどうするかという難関が待ち受けている。アイデアはいいが、ことばが拙いために値打ちのない企画に成り下がることはよくある。

冒険

ありきたりなことばの表現に安住してはいけない。ことばは未知を照らす灯りである。ことばの担い手は冒険家でなければならない。ことばで表現することに勇気は欠かせない。人類はことばを発明してことばによって生き、そしてことばそのものを生きてきた。生きるとはことばの飽くなき冒険にほかならない。

冒険には行動が伴う。だが、ほとんどの行動は偶然の思いつきの所産ではない。ホモサピエンスの出アフリカ以来数万年、行動はしたたかに計画されたと考えざるをえない。計画はことばによって練られたはずである。ことばそのものが冒険であり、ことばこそが冒険という行動を可能にするのである。ことばをないがしろにして鈍感になり始める時、人は冒険心を失い行動の幕を引く。


ことばは止まらない。「ことばは継がれて絶えず、しかももとのことばにあらず。巷間に語られしことばは、かつ消えかつ結びて久しくとゞまることなし」。聞き覚えのあるくだりに似ているだろう。『方丈記』をもじってみた次第である。

ことばは生まれ、ことばは消える
ことばが浮かばない、そして茫然とする
ことばを諦めれば、ことばは隠れる
ことばを疎外すれば、ことばがきみを疎外する
ことばに挑めば、ことばは生きる
やがてことばどうしが結ばれて
見えなかったものが見え始める

投稿者:

アバター画像

proconcept

岡野勝志(おかのかつし) 企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長 企画アイディエーター/岡野塾主宰 ヒューマンスキルとコミュニケーションをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です