文章コピー

ブログを始めてから今年の6月でちょうど10年。本に換算するとおよそ20冊分に相当する文章を書いたことになる。これに比べれば著書は少ない。実際に書店に並んだぼくの著書はわずかに二冊。あとクローズドな利用に限定したものが二冊。研修用にオリジナルで書き下ろしたテキストは数百種類あるが、ほとんど未公開。パワーポイントで編集したスライドに至っては何万枚もある。

テキストを編集する際には、引用した文章の出典を記す。本から引いたものをあたかも自分が書いた文章のように見せることはない。ところが、パワーポイントのスライドにこと細かに記載する習慣はあまりなく、口頭で伝える程度であった。しかし、他人の著書から何行にもわたってコピーして平然としている講師がいて、受講生にそれを指摘されて問題になるケースが少なからず発生している。研修先や研修会社からの要望もあって、ここ数年、スライドにも出典を明記するようになった。

スライドの画像はほとんどオリジナルで作っているが、紹介したい他人様の事例もある。その場合は、出版元の承諾を得るようにしている。ウェブサイトからダウンロードする場合も同様だが、どうしても元の出典や著作権所有者がわからない場合はURLを記載する。研修会社のスタッフがこういう作業に協力してくれるのでありがたい。

著作権の専門家の話を何度か聞いているが、アウトとセーフの境界はデリケートで素人には悩ましい。ひとまず、引用する側として良識的な神経を使うようにしている。しかし、ぼくの本やテキストやブログがどのように引用され転載されているか、場合によってはコピー/ペーストされているかについてはかなり無神経だ。このブログでも“Copyright ⓒ Katsushi Okano. All rights reserved.”と明記しているが、形式的な意味合いが強い。


このブログで使っているソフトウェアはWordPress。基本のソフトウェアの活用機能を強化するプログラムを「プラグイン」と呼ぶが、おびただしい数のものが無料で使える。たとえばスマホ対応にするとか、漢字にルビを振るとか、人気上位10位の記事の見出しを並べるとかだ。最近“Check Copy Contents”というプラグインをインストールした。ぼくの書くブログの記事のすべて、または一行一語でもコピーされたら検知してメールで知らせてくれる。コピーした時のブラウザ、機器もわかる。但し、誰がコピーしたか、そしてそれをどこにペーストしたかまではわからない。

著作権を守るために使っているのではない。だいいち、ブログ自体が気の向くまま書いて自分勝手に公開しているものだ。どこのどなた様か知らないが、小難しくて拙い文章を読んでいただけることにむしろ感謝しているくらいである。では、なぜこのプラグインをインストールしたのか?

ぼくの文章のどんなテーマの記事のどの箇所がコピーされているのか、ブログを読んでわざわざ「コピーしてくれる人」が食いついたキーワードや一行を知りたいだけである。コピーしたからと言ってペーストしたとはかぎらない。仮にペーストされたとしてもまったく気にしない。駄文が少しでも何かのヒントになるのならそれでいいのではないか(学生の論文へのコピペはいただけないが……)。

このプラグインの紹介文は次のように書かれている。

「どこの文章をコピーされたのかを知ることができるので、サイト内の文章やキーワードの需要をタイムリーに調査するのにも役立ちます」

同意する。権利云々ではないのだ。なお、インストールしてまだ半月も経たないが、すでに何百というコピー検知メールが届いている。コピーされた記事の自分の文章をあらためて読み直して自画自賛する時もある。着眼がいいなあ、ぼくだってこの箇所はコピーするかも、などと思ったりしている。いい意味でのシェアだと解釈すれば済むことである。

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岡野勝志(おかのかつし) 企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長 企画アイディエーター/岡野塾主宰 ヒューマンスキルとコミュニケーションをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。

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