一見わかりにくい写真だが、これはカステラの切り落としである。地域によっては「切れ端」や「端っこ」と呼んでいるらしい。肉の場合はだいたい切り落としと命名されているようだ。国産黒毛和牛のロースの切り落としなどと書いてある。もちろん、本体のブロック部分を切り分けたものよりも価格は安く設定されているが、切り落としでもグラム800円などというのはざらにある。
外側にあろうが内側にあろうが、成分と中身は同じである。ただ、パッケージに合わせたサイズと形の規格があるから、不揃いに焼き上がるカステラなどは規格に合わせて整えねばならない。そのときに不要な端っこが必ず切り落とされる。繰り返すが、定価で売られる本体もこうして規格外になった部分も味に変わりはない。贈答用と自宅用と用途に応じて買えば、安上がりだ。
ぼくの場合はカステラを贈答用に送ることなどないので、買う時はつねに自分用か親類用である。質よりも量を求める親類が多いのは幸いである。これまた幸いなことに、十数分も歩けばカステラ工房があって、そこの店先で切り落としを売っている。薄いのもあれば厚いのもあるが、目方を測っているから重さは同じ。散歩の途中で買って、自宅でのコーヒーのおやつにちょうどいい。
小難しい話にする気はないが、この規格品と切り落としの関係から〈中心と周縁〉という概念を思い浮かべる。中心必ずしも重要ではなく、周縁必ずしも瑣末でもない。「彼は会社の中心人物だ」という評価があっても、冷静に考えてみれば、いなければいないで何とかなる場合がある。そう、彼は中心ではあっても本質ではないかもしれない。
カステラの場合、中心も周縁も相互に支え合っているように思われる。周縁が本質的ではないからといって、周縁を始めからなくしておくわけにはいかない。高級なカステラなど結構、つねに切り落としで十分と考えるぼくは、オール切り落としを製造してくれたらいいと思っている。
あの割れおかきも全部最初から割っておいてくれたら安くなる(ひょっとすると、そうしているのかもしれない)。そう言えば、時々ランチに行っていた鉄板焼きの店でも、サーロインステーキ定食はほとんど売れず、誰もが切り落とし定食を食べていた。
15TT同期の日向野氏が,割れおかきを別ブランドで扱っています。
http://www.higanoseika.co.jp/mottainai/index.html
彼によると「メーカーは零細企業で,製造工程の管理が難しく,どうしても割れ物が出る」そうです。贈答用が粗利が高いので,そちらは,別の卸が扱っても,割れ物は日向野氏のところで扱うようです。最初から割ると,利益が薄いので,そこまではしないでしょう。
おかきを最初から割るというのは無論冗談です。最初から不具合のテキストを作って低価格で講義するようなもんですからね。
製造工程では絶対に割れないけれど、口に入れて噛めば割れるおかきを発明すれば、割れ物を出さずに済み、価格も安定させられますね。