独立してから30年が過ぎた。食べていくだけなら独立することはなかった。ぼくにとって独立は、食べていくことの他に生きることの意味を見い出すことであった。必然、生活のみならず、仕事が愉しめているかどうかが重要になった。そして、したい仕事、できる仕事、すべき仕事の一致を貪欲に求めた。
仕事と学び、新しいことへの好奇心を矛盾なく一体化するよう努めた。この考え方に共感してくれる人たちと様々な勉強会を主宰して今に到っている。創業直後に立ち上げた雑学勉強会〈Plan+Net〉は、ほとんどのトーク番組がアマチュアによるものであった。次いで、〈関西ディベート交流協会(Kansai Debate League Association)〉を発足させ、その直後にこれら二つの特徴を併せ持つ〈談論風発塾〉を創始した。
さらに、本を読んで論評し意見交換する〈書評輪講カフェ〉、お題に対して機知とユーモアを発揮するオンライン投稿サイト〈知遊亭〉、手作り料理とトークの〈釣鐘美食倶楽部〉等々、仕事とは別に――しかし、仕事とまったく無関係ではなく、むしろ仕事から派生した――様々な勉強会を主宰し運営してきた。
これまでの足跡を単なる終活とせず、もうひと踏ん張りして将来に波及するような形で編集したいとかねがね思っていた。幸い、オフィスに一部屋を確保することができた。手狭になった自宅の書斎の蔵書をここに持ち込み、本を読み談論する場とトークショーやミニイベント番組を編集することにしたのである。空間と活動の試みを〈Spin_off〉と命名した。ひとまず趣意を簡単にしたためてみた。
この場からさまざまなテーマのレクチャー、トーク、イベントなどの集いが派生し、共鳴し合って知と体験を紡ぎます。場と機会を求める主宰者が、テーマのジャンルを超えてつながり協同する、それが〈Spin_off〉です。〈Spin_off〉は主宰者と参加者の相互サポートによって成り立ちます。
それぞれの本業や本筋から愉快なことを「派生」させたいと思う。異なるテーマが相互に共鳴し合って、新しいテーマを紡ぐ。何が生まれるかはわからない。わからないからおもしろい。トークやイベントの主宰者、参加希望者はお問い合わせいただきたい。引き続きぼくもいくつかの主宰番組を受け持つ。順次オープニング案内をお送りする予定である。