イタリア語を独習した頃

英語がある程度習得できたら、次はフランス語、その次はイタリア語と決めていた。本気で英語を独習しようと思ったのが19歳。一年も経たないうちに話し聴くことに不自由しなくなり、二十代半ばまでに英語を教えたり書いたりして生計を立てるようになった。

高校までに学習した下地があったので、期待以上の運用能力が身についた。当時はCDなどという便利なものがなかったから、機会は少ないがラジオやテレビを活用した。オープンリールのテープレコーダーに録音して何度も聴いた。音読にはそれ以上の時間を費やした。

さて、次はフランス語。と思いきや、まとめて勉強しようと思えば高額なテープセットを買うしかない。そんな余裕はなかったから、英語と同じように音読から入ろうとした。しかし、下地のあった英語のようにはいかない。音読するにもお手本に乏しく、英語に慣れた舌はフランス語の発音をかなり難しく感じてしまうのだ。あっさり諦めた。その次の予定のイタリア語を先にやってみようと一瞬思ったが、仕事も忙しくなり語学どころではなくなった。


二十年近く前に、ひょんなことからイタリア語を独習しようと思い立った。フランス語に比べれば、少しコツさえ摑めば音読できたからだ。「語学習得には音読」というのが信念だから、聴くよりも前に文章が読めるというのが絶対条件である。イタリア語は音読にはぴったりだった。当時すでに教本も音声教材も充実していたから大量学習もできた。

英国で出版されたイタリア語教本から始め、手当り次第に音読した。NHKのイタリア語ラジオ講座は気まぐれにしか聞かなかったが、テキストだけは45年間買い続けた。何度もイタリアに出掛け、20数都市を巡ったが、書くことを除けばあまり困ることはなかった。最後にイタリアを訪れてから早や10年になる。イタリア語からすっかり遠ざかってしまった今日この頃である。

蔵書の置き場がなくなった書斎から、ハウツー系の本や、もはや読むことがなさそうな小説、何かのためにと保管していた雑誌類などを引っ張り出し、処分することにした。かなりの量である。そこにお世話になったラジオ講座のテキストが数十冊含まれている。傍線やメモがおびただしい。少し懐かしくページを捲ったが、キリがない。他のことでめげそうになった時の励みになればと思い、学習の足跡だけでも写真で記録しておくことにした。

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岡野勝志(おかのかつし) 企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長 企画アイディエーター/岡野塾主宰 ヒューマンスキルとコミュニケーションをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。

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