エコとエゴ

環境保護という四字熟語に絶対的信頼を置かないほうがいい。エコ、エコ、エコと繰り返される日々だが、エコがこだましてエコー状態だ。エコを叫ばなくてはならないのは、エコが「使い捨て文化」とセットだからである。

なぜ使い捨て文化になるかと言えば、買い過ぎるからであり、安直なものを買って壊れるからであり、飽きるからであり、モノの価値が執着するに値しなく思えるからであり、修理するよりも買い替えるほうが安くつくからだ。まず、エゴという名の、この悪しき文化的習慣を見直さねばならない。

欲しいわけでもないものを安いという理由で買う。気にも留めていなかったものを広告にそそのかされて衝動的に買う。いつ頃からこうなったのかという社会文化的分析をするまでもなく、個人的な経験を手繰って祖父母の時代とぼくらが生きている現在を単純比較してみれば、おおよその見当はつく。


使い捨て文化を改めるには、保有しているものを長く使う意識を根付かせるしかない。モノというのは捨てるものではなく、上手に長く使い、壊れたら直すという、かつての本能を思い出す。すると、財布のひもが堅くなるから、作り手も売り手も品揃えや安物を控え、たまにしか買ってもらえないが、長持ちする高価な商品に注力する。すると、モノが今のようには売れなくなり経済は縮小する。

いかにも、大経済から小経済、大商圏から小商圏、まるで町内でモノの売り買いをするような経済になり、シナリオ上は待望のエコ社会が実現するのである。必要以上に欲しがらず、したがって、売り手も濡れ手に粟を夢見ることはなくなる……。しかし、これを望んでいないのは、実は買い手であり使い手のほうなのではないか。

捨てないためには、捨てるものがないようにすればいい。つまり、次から次へと買わず、いったん買えば長く使うという習慣を身に付けるしかない。とは言え、すでに持ってしまったのである。持ってしまったものを捨てないからと言って、新たに買わないとはかぎらない。エコの精神はエゴの欲望の壁になかなか打ち克てない。

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岡野勝志(おかのかつし) 企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長 企画アイディエーター/岡野塾主宰 ヒューマンスキルとコミュニケーションをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。

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