久々の二字熟語遊び

シリーズ〈二字熟語で遊ぶ〉は、二字の漢字「AB」を「BA」としても別の漢字が成立する熟語遊び。大きく意味が変わらない場合もあれば、まったく異なった意味になる場合がある。その差異を例文によってあぶり出して寸評しようという試み。

二字熟語アイコン

『二字熟語で遊ぶ』『続・二字熟語を遊ぶ』『二字熟語を遊ぶ、再び』と題して掲載したが、在庫が増えてきたので、久々に復活しようと思う。

【野分と分野】
(例)その昔、台風は「野分」(のわき/のわけ)と呼ばれていた。現在の気象予報の「分野」では台風と言っている。

野分は強風が野の草を吹き分ける様子を見事に描写している。ところで、台風を野分1号、野分2号などと告げたら、のんびりしてしまって、まったく危機感を感じなくなるだろう。

【日当と当日】
(例)出張に伴う費用は「日当」で計算しますが、そのつど「当日」払いはしません(経理担当)。

サラリーマン時代、出張が一週間にわたっても費用を立て替えるのが常で、精算は後日になることが多かった。申請漏れすると自腹を切ることになる。日当は前もって仮払してもらうにかぎる。

【名人と人名】
(例)世界「人名」辞典をひも解いても、必ずしもわが国の「名人」の名が見出し語で出てくるとはかぎらない。

世界を対象にした人名辞典にわが国の将棋や囲碁の名人も宮大工の名人棟梁も見当たらないが、水タバコ長時間喫煙記録保持者のトルコ人は収録されるかもしれない。それが名人に値する功績かどうかはともかく。

【球速と速球】
(例)「速球」を投げ込んだつもりだったが、軽々とレフトスタンドに運ばれてしまった。思ったほど「球速」が出ていなかったようだ。

速球にもいろいろな球速がある。剛速球の投手は150km以上出すだろうが、120kmの速球でのらりくらりという技巧派もいる。急がば回れなどと言うが、一般的には速いほうが遅いよりも褒められる。

【高座と座高】
(例)おれを見て観客が「座高」が高いと言ったけれど、「高座」に座れば誰だって座高が高く見えるのだ。

高座で噺家が一席披露している位置は、想像以上に高いのである。前列に陣取ると、まるで1階から2階を見上げるような感じになる。大袈裟ではない、実際に寄席へ足を運んでみればわかる。

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岡野勝志(おかのかつし) 企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長 企画アイディエーター/岡野塾主宰 ヒューマンスキルとコミュニケーションをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。

「久々の二字熟語遊び」への2件のフィードバック

  1. 【感情と情感】

    松本が感情をこめて歌う「イパネマの娘」、聴く人々にはイパネマ海岸の情感が浮かびあがります。(伯剌西)

    1. どんな「事情」があるにせよ、娘と「情事」に陥ってはいけません。
      なお、これまでに紹介した二字熟語は、上記の事情―情事の他に、金賞―賞金、便利―利便、段階―階段、体重―重体、出家―家出、論理―理論、背中―中背、貴兄―兄貴、落下―下落、分子―子分、期末―末期、所長―長所、手元―元手、発揮―揮発、水力―力水、そして今回の5つです。未発表の在庫は100近くあります。

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