ユネスコ無形文化遺産を食す

地元のオフィス街の食事処では洋食と中華とラーメンが優勢。相変わらず人気のトンカツ定食やハンバーグ定食が和食か洋食か微妙だが、味噌汁が付くので和食っぽい。しかし、申し訳程度に添えられたキャベツとポテトサラダを見ると洋食組。他に、親子丼とミニうどんの定食や豚骨ラーメンとミニ炒飯のセットなども注文が多い。たまに無性に食べたくなるが、決してバランスの取れた食事だとは思っていない。

京御膳

近くに平日の昼限定の京御膳を出してくれる店がある。お値段千円で多彩な食材が使われている。月に一度は通う。完食しても腹八分目で抑えられる。近くの別の和食の店は鯛めし御膳に特化している。鯛めしが食べ放題なので過食に要注意だが、これもお値段千円である。

鯛めし御膳

平成2512月、日本人の伝統的な食文化として和食が「ユネスコ無形文化遺産」に登録された。京御膳と鯛めし御膳はどちらも堂々たるユネスコ文化遺産ということになる。食べ終われば目の前から消えてなくなるが、能や文楽、陶芸や工芸の技術に匹敵する「世界のお宝」なのである。

🥢 和食は四季を反映する。南北に長い地形ゆえ、わが国には多様な地域特性があり、新鮮な旬の山海の幸に恵まれている。食材ごとに持ち味を引き出したり引き立てたりする技が育まれてきた。

🥢 主食の米とおかず(味噌汁、魚、野菜、山菜など)の食事構成のバランスが取れている。和食は動物性の油脂を極力控える健康栄養食であり、長寿に寄与していると考えられる。

🥢 口に入れることのない葉っぱや花を、ビジュアル的な印象のために料理にあしらう。味覚だけで満足せず、料理を盛り付ける食器、料理をいただく部屋にまでその時々の季節の自然を演出する。

🥢 どこの家でも日常的に旬の料理をいただくと同時に、正月から始まり晦日に至るまで一年を通じて歳時と関わる献立が工夫されることが多い。また、家族の集まる場や地域では固有の行事食が供される。

上記の4項目がおおよその申請内容である。和食ないしは和食文化の良いところどりをしていて、今の「洋風化した和食」のイメージとはやや隔たっている。どちらかと言うと、伝統的な高級料亭の食材、料理、あしらい、作法の趣が強い。とは言え、素直に誇らしく食卓について和食を味わうのも悪くない。和食にリスペクトを込めたいのなら「ユネスコいただきます」で始め「ユネスコご馳走さまでした」で終わるルーチンがいいかもしれない。

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岡野勝志(おかのかつし) 企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長 企画アイディエーター/岡野塾主宰 ヒューマンスキルとコミュニケーションをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。

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