古本と書いて「ふるほん」と読む。それ以外の読み方はありそうにない。かつてぼくも知らなかったが、古本は「こほん」とも言うのである。昔はそれが本家だったようだ。
『新明解国語辞典』では「所有者が(読んだあと)、不要として手放した本」を古本としている。ご丁寧に「読んだあと」と補足してあるが、別に読んでなくてもいい。書店で新刊を買ったが、読まずに本棚に置いていた本も処分すれば古本である。また、手放した本だけが古本なのではない。ぼくの本棚には、所有者であるぼくが読んだあとも置いてある古本が全体の半数を占めている。
『新明解』は古本も取り上げていて、「(同種の本の中で)増補・改変される前の原形を比較的多く伝えている本」としている。書かれたり出版されたりしてから時代を経ているので、いわゆる古書である。令和の現在から見て平成の本を、たとえ希少だとしても、古本とは呼びづらい。しかし、新約聖書を遡っていき、マルチン・ルターの最初の聖書の面影を残している時代物に出合ったのなら、それは古本と言えそうだ。
「新古本」という類もある。「しんこほん」または「しんこぼん」と読む。新しいのか古いのかよくわからない。行きつけの古本屋の店頭に時々並ぶ。先日買ったエッセイ集はそこに並んでいた一冊である。
奥付には「2016年6月25日 第1刷発行」と記されている。7年前に発行されたので新刊ではなく、しかも増刷もされていない。書店で売れ残った本が出版社に返品され、通常の再販制度とは違った流通ルートに流れるのが新古本。
かと言って、一度も売られておらず誰の手にも渡っていないので、古本ではない。実際、この本は完璧な新品。しかし、堂々と胸を張って新刊とは名乗れないワケアリ本である。「新品同様、だいぶ前に出版された売れ残りの本」が新古本。新刊と古本のちょうど中間くらいの値付けがされている。