午前中に衣類の入れ替えを済ませた。その後、ランチも兼ねてしばらく外出した。身体が気だるく、帰宅後はごろんとしていた。衣類の片付けが済んでも、半年以上積み放題にしてきた四つ、五つの本の山はそのままである。所在なさげに山々を虚ろな視線で舐める。電源がオンのままのパソコンの画面に向き、iCloudをクリックした。
アルバム内をうろうろしているうちに、2011年11月21日の写真に行き着く。一枚の人物写真。よく晴れわたった日ではあったけれど、陽光が眩しかったわけではない。なのに、その人物は癖のせいか陽射しを気にするようにやや目を細めている。ジーンズに半コート姿、左手をそのコートの左ポケットに浅く入れている。肩から小さなバッグを斜めに掛け、Lumixのカメラを首から吊るしている。その写真に収まっているのは、ぼく自身である。
パリよりも緯度が高いブリュッセル。少々底冷えしていた。透明感のある空気。ついでに時間も透明だった切手がなかなか手に入らない、国際切手を置いていないところが多い……そんな話を以前ブログに書いた。
運よく切手を売っているタバコ屋があり、その店でついでに絵はがきも買った。それでカフェに入り、カフェベルジーノを飲みながら、ささっとボールペンを走らせた(……) 近くのパッサージュのような通りに郵便ポストがあると聞いたので、投函しに行った。
そこにあるポストは壊れかけたような代物で、無事に集配してくれそうな雰囲気がまったくない。通りがかりの学生風の男性に聞いたら、これがポストだと言う。「だけど、一日に一回、午後4時半の集配だけだから、明日になるね」と付け加えた。
時計は午後5時を回っていた。一日後の集配になるわけだし、何よりも信頼を寄せられない雰囲気のポストだ。というわけで、絵はがきを書いたという証明のために投函前に写真を撮ったのである。だから、消印が押されていない。
当時の様子を綴ったブログが、絵はがきを、郵便ポストを、カフェを、街角を、人の流れを彷彿とさせる。ここに先の自画像のような写真が加わって、ちょっとした回想物語を観劇しているような気分である。その後、飛行機雲の写真も出てきたし、その写真をデジタル的にアレンジした絵を一年前に作成したのも思い出した。何かしら透明なのである。けれども、「透明な」に続くことばを探しあぐねている。