机上に置いている辞書

事務所にどれだけの辞書があるか。全部数えてこのブログで書いたことがある(『辞書、辞典、事典、百科……』)。約90冊だった。それが7年前。あっちの本棚、こっちの本棚とばらばらに置いてあったので、4年前に辞書類を一つの本箱にまとめた。

何とか全集というのをいろいろ揃えているが、未読のまま本棚に収まっているものが多いし手に取る機会も少ない。辞書も全集のように出番が少ない。全集や辞書は場所を取るのが難点。その不満を誰かにこぼしたら、電子辞書で済ませればいいと言われた。おいおい、あんなものでは調べた気にならないのだよ。おまけに、紙を繰ったり傍線を引いたりする楽しみもなくなる。と言うわけで、たまに使ってささやかに楽しむために辞書に少なからぬスペースを割いている次第。

席と辞書の本箱は離れているので、使用頻度が比較的高い56冊を机上に置いてある(写真は年明けからのラインアップ。英語の仕事が入ると、ここに英和辞典が加わる)。よく使うのが国語辞典。長らく使っていた『広辞苑』は本箱に入ったまま。数年前からは『新明解』一筋。自宅では第七版、オフィスでは第八版の青版を使っている。『コロケーション辞典』というのも机上組の一冊で、これは名詞と動詞の結びつきが調べられる活用辞典。動詞がなかなか思い浮かばない時に役に立つ。暇な時に当てもなく適当にページを繰って読むこともある。

ことわざと四字熟語の辞書は一種の読み物である。覚えてやろうなどとは思わない。何かを見たり聞いたりして、気になったら調べる。たとえばきれいな夕焼けを見た時に、さて夕焼けのことわざがあるかどうかチェックしたりする。先日コインケースを買い替えた折に、「財布」を引いてみた。財布をわざわざ辞書で調べるのは今回が初めてだ。

🏷 「財布の紐を握る」(『明鏡ことわざ成句使い方辞典』)
収支の管理をつかさどることを財布で象徴しているが、紐の握り手は主婦ということになっている。ところで、最近は握る紐が付いた財布は見かけないので、「財布のファスナーの開け閉めをする」とか「クレジットカードの暗証番号を夫に洩らさない」とでも言うか。

🏷 「財布と心の底は見せるな」(『世界の故事名言ことわざ』)
イタリアのことわざだ。人は中身が見えないもの、見づらいものを見たがる習性をもつ。その典型が財布と心の底だという。

🏷 「財布の底をはたく」(『明鏡ことわざ成句使い方辞典』)
有り金をすべて使ってしまうこと。新明解によれば、叩くとは「中に入っている物を全部外に出す」という意味。それなら、わざわざ財布の底を叩くと言わずに、「財布を叩く」と言えば済みそうだ。しかし、それではありきたりの成句で、値打ちがない。ことわざっぽくするなら、やっぱり「財布の底を叩く」なのである。

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proconcept

岡野勝志(おかのかつし) 企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長 企画アイディエーター/岡野塾主宰 ヒューマンスキルとコミュニケーションをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。

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