テープレコーダーの話を持ち出すと、「古い!」と片付けられそう。ぼくが二年半前に買ったミニコンポはCD/DVD、MD、カセットテープ対応。別にDVD専用機があるので、このミニコンポの主な用途はCDである。MDもカセットテープもめったに使わない。
つい15年くらい前まではカセットテープで何でも収録していた記憶がある。それ以前に主宰していた勉強会の講座はほとんど録音してあるが、すべてカセットテープ。保存はしているが再生したことがないので劣化しているかどうかもわからない。
カセットテープのように、時系列で記録するのを「シーケンシャル」という。片面30分のテープで話を収録した直後に巻き戻して、たとえば最初の5分間を再生してから10分間をとばして次の5分間を聞こうと思ったら、早戻しや早送りを何度か繰り返さなければならない。CDやDVDにすっかり慣れてしまった今ではかなり面倒な作業だ。
脳はCDやDVDと同じくランダムアクセスな機能をもつ。それをカセットテープのように順序制御中心の使い方をしていては損である。情報を取り込むにしても活用するにしても、あちらこちらへとジャンプして記録・再生するのが望ましい。このことは読書にも当てはまる。
一冊の本、たとえばAを完読する。次いでBという本を読了する。さらにCへと移る。この読書行為はカセットテープの機能によく似ている。三冊の本、A、B、Cはテープに読んだ順序で記録される。Aの情報のみ残像となってBやCの読書に何らかの影響を及ぼすが、Aの本を読んでいる時は、Bの内容もCの内容もAに影響することはない。Aを記録している時は、BについてもCについても読者にとってはまったく未知の状態だ。
ぼくはこの読書の方法が機会損失だと考える。仮に一週間か10日間で三冊の本を読むのなら、A⇔B⇔C⇔A……というような相互に関わる読み方をしたほうがいい。つまり、三冊並行して読むのだ。そうすれば、A、B、Cの三冊の内容が互いに影響を及ぼし合って、情報の相乗効果が生まれる。まさに脳の並行処理機能に自然な知識の形成や融合、編集が可能になるのだ。こういう読み方を〈パラレル読書術〉と名付ける。
読みたい本を選んだまではいいが、一冊最後まで読むだけのテンションを保てない内容のものだってある。そんなとき、飽きれば別の本を読めばいい。A→B→Cをしっかり読むよりも、行ったり来たり拾い読みするほうが定着も活用もうまくいく。ぜひ試していただきたい。但し、小説などの読み物やストーリー性の高い書物はこのかぎりではない。