仕事の合間に

ああ、また凝り過ぎてしまった。「過剰よりも不足、複雑よりも単純」を創意工夫の根本に置いているつもりなのに……。

仕事に直接役立つ「中心付近」から入るよりも、「周縁」をうろうろして時間を費やすほうがいい。即効は望めないが、先々でじわじわと効いてくる。これも一つの経験則。

「悲観的に過ぎず、また楽観的に過ぎず」というような節まわしで二項対比していると、やがて二項は対立したり寄り添ったりする。結局、「どっちでもいいのではないか」に落ち着く。諦念と言えば格好いいが、無責任でもある。

「今の時代に合った働き方を!」とテレワークを肯定する人たちがいるが、いったいその働き方とは何なのか? 「今の時代に合った働き方」の前提にテレワークやリモートを置いているのだから、これは同語反復にほかならない。つまり、わかっていない。

何十回もここに来ている。映画鑑賞に来るのだが、シネマの入っている建物の裏手に足を踏み入れたことはなかった。早く着いたので裏手に回ってみた。大都会では絶対にありえないはずの里山風景を、この大都会・梅田で目にした。

人生は自分が生きるのは大変だが、映画館で見れば他人事で済む。いつもそう思うが、スウェーデン映画『ホモ・サピエンスの涙』を観て、強くそう思った。

しばらく会っていない人から手紙が届いた。この時期――しかも今年のこの時期ゆえ――しみじみ感が募る。お気楽には暮らせないのだ。仕事をやめて家にいる。現役時代はちっとも自分が見えなかったが、今は自分ばかりが見えてしかたがないそうだ。
ぼくが仕事を続けているのは――今も少しは出番があるからだが――何よりも自分から目をそらせる時間が増えるからである。自分が見えすぎるとナルシズムに陥る。そして、ナルシズムに捕まると、つまらないことを考えたり悩みの種を蒔いたりすることが多くなる。

働き始めてから今に到るまで、いつまで仕事をするのか一度も考えたことがないし、仕事をしていない自分を想像したこともない。

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岡野勝志(おかのかつし) 企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長 企画アイディエーター/岡野塾主宰 ヒューマンスキルとコミュニケーションをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。

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