♫ 人生いろいろ ユーザー名もいろいろ パスワードだっていろいろ 咲き乱れるの
サービスを利用するたびにユーザー名とパスワードでログインする。認証されればサービスが受けられる。とても面倒くさく思えるが、自分の家に入る際にも「鍵で解錠」し、出掛ける時は「鍵で施錠」する。あれと同じことだ。問題は鍵に相当するパスワードがどんどん増えて忘れてしまうこと。忘れないように手帳に書き留めたりすると、パスワードの漏洩リスクが高まる。覚えるのがいいが、忘れにくい単純なパスワードを使い回すことになる。
パスワードとは合言葉。自分とサービスの提供先との間であらかじめ取り決めた文字・数字の組み合わせだ。サービスの提供先に行くために、まずスマホやPCなどの情報機器を操らねばならない。情報機器へのログイン時に入力する合言葉が、事前に登録したものと一致すればサービスを受けることができる。ぼくは大丈夫だが、四苦八苦している知り合いのシニアユーザーは少なくない。
英語の“password”も秘密の単語やフレーズだが、機密情報にアクセスするのが本来の目的である。さらに語源を遡れば、味方と敵を識別するためにあらかじめ定めた暗号に行き着く。一方の忍者が「山」と問い、他方が「川」と答えれば味方だとわかり、近づけたり門を開けてくれたりする、あれがまさに昔のパスワード認証だった。パスワードにもパスポートにも入っている“pass”は通行許可の意味。
ホテルのチェックイン時に「ご宿泊のお客様限定の割引券」をもらった。券面には「パスワードでお食事されたお客様にお飲み物をサービス致します」と書いてある。入店時か支払時にパスワードを入力すればサービスが受けられるのか。割引券をよく見、電話や電源のそば、部屋のあちこちを探したが、パスワードらしきものは見当たらなかった。「ま、いいか」と諦めて1階の食事処へ行けば、店の名が『パスワード』だった。実話である。
パスワードは、自分で作ったものであれ自動的に生成されたものであれ、完璧に記憶したつもりが、しばらくすると忘れてしまい、紙に書いても紙を紛失してしまう。リスクを低くするためにサービスごとにパスワードを変えるから、日に日に増えていく。パスワード人生はストレスが溜まる。