ロサンゼルスは日本時間から16時間遅れ。たとえば日本の火曜日の午前7時45分は、こちらでは月曜日の午後3時45分。ロサンゼルス郊外、市街から南へ約1時間、海岸沿いにあるランチョ・パロス・ヴェルデスの親戚の家にいる。
午後5時、ドジャー・スタジアムに出掛けた。言うまでもなく、ロサンゼルス・ドジャースのホームグラウンドである。対戦相手はフィラデルフィア・フィリーズ。途中、バスケットボールのファイナルの会場前を通ると、レイカーズファンでごった返していた。ほぼ同時刻のスタートなのでどっちを観戦するか迷ったファンもいるだろうが、レイカーズのほうは数万円にまでチケットが跳ね上がっていたらしい。
さて、スタジアムで陣取った席はドジャース側、つまり三塁側ブルペンの少し上。一塁側だと直射日光を浴びるが、ちょうど陰になった直後の好位置。しかし、5回表頃からは冷えてきた。名物のホットドッグ「ドジャードッグ」を頬張る。ロサンゼルスに来て過食気味なので、夕食はこれとコーラだけ。いかにもアメリカンな食事だ。ぼくの前の列の四人家族などは試合もそっちのけで、次から次へと飲み食いしていた。
野次はそこそこあるが、「かっとばせ~」というのがない。一球ごとに電子オルガンが鳴ったり拍手が起こることもあるが、一投一打の一瞬はシーンとする。おまけに申し訳程度のバックネットが少しあるだけで、ぼんやりしているとネット越えのファウルボールが危ない。甲子園のようにファウルグラウンドが大きくなく、観客席のすぐ前に三塁コーチが立っているほどの接近感。ファウルボールは日本の倍は飛んでくる。
3回裏、数メートル左手にファウルボールが飛んできた。一人がはじき、そのはじいたボールを取ろうとした直前の列、すなわちぼくと同列の三、四人向こうの男性がこれまたはじき落とす。その落としたボールがバウンドせずにちょうどぼくの足の下に転がってきた。もちろんこのチャンスを見逃すはずもない。何の苦もなく足元のボールを拾った。旅行者の漁夫の利である。
年間チケットを購入するほどのドジャースファンで20年来通い詰めてもゲットできない人がいる。試合後にオフィシャルショップでシャツか帽子でも買おうと思っていたが、そんなものどころか、千載一遇の宝物となった。