うなずき

 「とにかく彼は首を横に振らず、タテに振る。つまり、いつもうなずくのだよ」

 「それは聞き上手の人の特徴だね」

 「ところが、聞いているかどうかはわからない。『聞かない上手』かもしれない。見ざる・言わざるとセットになった聞かざるみたいな……」

「見もしない、言いもしない、聞きもしない?」

 「見る・言う・聞くが3点セットだから、見ない・言わない・聞かないも3点セット」

■ 「聞き上手ではなく、うなずき上手というわけか……」

■ 「うなずくからと言って、イエスとは限らないんだな。英語に“Yes-disagreement”という表現がある。異存はあるけれど、口先ではイエスと言っておくこと。まあ、ある種のうなずく振りだね」

 「振りができるのはなかなかの業師わざしだな」

 「ある意味でしたたかだね。人の話を聞かずにうなずくなんてかなり大胆さ。ぼくにはそんなマネはできない」

 「うなずく振りをしながら、何も言わないわけ?」

■ 「ぼくが『あのね』と話しかけた瞬間、首がちぎれるのではないかと思うくらいうなずき始める。ずっと黙っているわけではなく、時々合いの手を入れるんだ」

 「どんな合いの手?」

■ 「『うんうん、そうそう』が多い。とどめは『はいはい』。はいじゃなくて、はいはい。はいを重ねるから化けの皮が剥がれる。そこまで面倒くさいこと言わなくてもわかってますよ、という意味だからね」

 「ホンネは他人と交わりたくないのだけれど、処世術的にはやむをえない。その種の人たちならではの知恵だな。実際、使ってみると便利だもの」

 「おいおい」

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岡野勝志(おかのかつし) 1951年大阪生まれ 企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長 企画アイディエーター 岡野塾主宰 ヒューマンスキルをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。 マーケティング、コミュニケーションにまつわる企業や人

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