語句の断章(26)問答

問いのないテスト用紙に答えは書けない。生活や仕事で問題があると薄々感じていても、その問題が明らかでなければ解けない。解決の難しさの最大の理由はここにある。裏返せば、問題を記述化して明らかにできた時点で、解決への一歩を踏み出すことができる。「問題は何か」という問いに何がしかの答えができれば、糸口が見つかるのである。

「言い表わすことのできない答えには問いを言い表わすこともできない。謎は存在しない。およそ問いが立てられるのであれば、この問いには答えることができる」
(ヴィトゲンシュタイン)

問題のありかを問いの形で表わすのは、解決を促したり答えを導いたりするうえで有効だ。その問いが的を外したような愚問なら答えもつまらないだろう。アレキサンダー大王がインドの行者に言った、「難解な問いへの答えもまた難解である」と。問いの質と答えの質は響き合う。問いと答えは二つでワンセット。だから〈問答〉という。

物事を理解しているかどうかを判断しようとして問い、その後に答えの中身を評価するのが常套手段。さほどいい方法ではない。むしろ、答えさせるよりも質問させてみるほうが理解度がよくわかることがある。

「旅はいかがでしたか?」などと問われて困ることがある。たいてい「よかったよ」と応じるしかない。こんな問いに答えるのは時間の無駄だ。ほんとうに旅のことを知りたければ、その程度の社交辞令的な聞き方をするはずがない。古代ローマの詩人であり喜劇作家であったプブリリウス・シルスは「どんな問いでも答えるに値するとはかぎらない」と言った。良き問答は良き問いによって成り立つのである。

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岡野勝志(おかのかつし) 1951年大阪生まれ 企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長 企画アイディエーター 岡野塾主宰 ヒューマンスキルをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。 マーケティング、コミュニケーションにまつわる企業や人

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