読んだ本の取り扱い

書店巡りをして本を買ったらブックカバーを付けてくれた。次のような宣伝文が印刷されていた。

「読み終わりましたらぜひお売りください」(TSUTAYA)
「家にある本、お売りください」(BOOK-OFF)

新刊であれ古本であれ、本をよく買う。買った本は読むか読まないかのどちらか。読まないのなら買わなければよさそうなものだが、読まなかったというのは結果の話。読む気があったから衝動買いしたのである。買った本はそれぞれおよそ3分の1の割合で分類できる。完読する本、拾い読みする本、まったく読まずに書棚に並べられる本。

読んでいない本を処分しないのは、気になるから置いているわけで、いつかは手に取って読もうという気はある。しかし、もし本を売るとなれば、読んだ本ではなく、読んでいない本だろう。BOOK-OFFの宣伝文句にある「家にある本」で買ったままそのままにしている本のほうが処分の対象になりうる。


文庫本と違って、単行本は置き場に困る。すでに読んだ本をダンボール56箱に収納していたことがある。もう30数年前のこと。大掃除の日に家人が誤って廃棄してしまった。不用だという判断をしたのも無理はない。ダンボールには、ガルシア・マルケスの『百年の孤独』などのラテンアメリカ小説、ビュトールなどのお気に入りのアンチロマン小説を入れていた。読了した本が手元から消えて、ちょっとした寂寥せきりょう感に襲われたのを覚えている。意図に反しての処分だったが、本を処分したのはこの一件のみ。

数年前に『百年の孤独』を再読しようと思い書店に行った。まだ文庫化されていなかった。今も文庫になっておらず、間違って廃棄したのと同じ単行本しかない。しかも、当時よりも値段は上がっている(ちなみに、ウンベルト・エーコの『薔薇の名前』もまだ文庫化されていない。世界的ベストセラーになった小説はなかなか文庫にならないのである)。

以上のことからわかるように、ぼくは読み終わった本は捨てないし売りさばかない。気に入った本は二度読みするにかぎる。読んだからこそ、手元に置いて再読機会を待つのである。