音の不思議

雨脚の強い朝とは打って変わって日が照り始めた昼過ぎ。湿度が上がり気温も高く、室温24℃設定でエアコンをつけて本を開く。

「あまおと(雨音)」という音は響きがいい。雨の日に詩を書いたら、一節に入れておきたくなる一語である。あまおとにはどんなメロディを合わせればいいだろうか。

「うちゅうにでかけてながめるこうけいはぼくをたかぶらせる」。

誰かがこう言えば、十中八九、うちゅうを宇宙と聞いてしまう。宇宙に出掛けて眺める光景はぼくを昂ぶらせる? まさかきみが宇宙に出掛けるはずはない。なのに、うちゅうという音はまず宇宙を想像させる。

うちゅうという音の響きは文脈の外に出て、非現実的な意味になる。きみが宇宙飛行士であるはずは絶対にない。現実世界の経験からすれば、うちゅうは「雨中」に決まっているのに……。

年に百日以上も体験する雨中の外出。雨中に出掛けて眺める光景はぼくを昂ぶらせる。見慣れた街の光景が一変するわけでもないのに、雨音はいつものあの角を曲がると別の光景を予感させる。あまおとという語感とともに。

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岡野勝志(おかのかつし) 企画の総合シンクタンク「株式会社プロコンセプト研究所」所長 企画アイディエーター/岡野塾主宰 ヒューマンスキルとコミュニケーションをテーマにしたオリジナルの新講座を開発し、私塾・セミナー・ワークショップ・研修のレクチャラーをつとめる。

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